SSブログ

運命

かつて、自分自身を「透明な存在」と表現した猟奇的犯罪者がいた。

今の俺には、その真意が理解できる。
だからと言って、俺が何かをやらかすわけではないが、彼の言いたかった事が、俺には手に取るようにわかる。

透明な存在は、どこまでも透明であり、なおかつそれでも存在はしていなければならない。
それは、筆舌に尽くしがたい苦悩をその人間に与える。

その苦悩から逃れるためには、透明な存在を辞めなければならない。
その方法の一つが、彼にとって犯罪行為だったのだ。

犯罪を犯すことにより、彼はある意味一躍世間を賑わせ、透明な存在から脱却したのだ。
しかし、その代償も大きなものとなった。

俺は犯罪行為は出来ないが、それ以外に何か方法はないかと考える。
残念ながら、その答えは見つからない。

いや、見つからないという表現は間違っている。
無い、と言ったほうがいいだろう。

したがって、俺はこのまま一生苦悩し続けなければならないことになる。
透明な存在の、運命だ。
トラックバック(0) 

トラックバック 0

過酷カネ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。