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クラッチ

俺という時間は、今失速中だ。

時の流れは、皆に平等なのかもしれないが、その勢いは人によって異なると俺は思う。
仕事や家庭が充実している人間にとっての時間の流れには、勢いがある。

比して、今の俺のように何もしていない、充実とは真逆の状態の人間にとって、時間はその勢いを失う。
まるで淀んだ川のようだ。

クルマに例えて言うならば、クラッチが繋がっているかそうでないかの違いだ。

クラッチが繋がっていれば、タイヤはエンジンと直結し速度が保たれ加速も出来る。
たとえ減速状態にあっても、決してクルマの勢いは衰えず、自ら動くという状況に変わりはない。

クラッチが繋がっていない場合、エンジンからの動力はタイヤに伝わらず、クルマは惰性で動いているだけとなる。
そしていずれは、その動きを止めてしまう。

今の俺は、クラッチが全く繋がっておらず、惰性で動いているだけだ。
クラッチを繋ごうとしても、俺はその術を知らない。

再びクラッチが繋がることは、永久に無いだろう。
やがてはエンジンも、力尽きるだろう。

そうなったら、もうおしまいだ。
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