感じるな、考えるんだ

俺は、感情表現に乏しい。

いつからかは定かでないが、長らく笑ってもいないし泣いてもいない。
会社に勤めていた時でさえ、俺は感情を表に出すことは滅多になかった。

なぜこのように、喜怒哀楽を表現する事が困難になってしまったのだろうか。
それはきっと、幼少期から感情を抑圧されてきたからではなかろうか。

当たり前に育った人間は、楽しければ自然に笑顔になる。
だが俺は、仮に楽しいと感じても、一旦それを思考回路に通し、今は楽しいのだから笑顔にならなければいけないと、考えてしまうのだ。
したがって、俺の笑顔は不自然なものになってしまう。

そんな、無駄な作業を、俺は長年続けてきてしまい、終いにはそれに疲れ果ててしまった。
要するに俺は、物事を素直に感じることが出来ず、考えてしまうのだ。

かのブルース・リーは言った。
「考えるな、感じるんだ」

俺はその真逆な作業を、これまで延々と実行し続けてきてしまったのだ。