矛盾

俺が、ただ単に透明という状態ならば、何ら問題はない。
だが、俺は不幸なことに、存在してしまっている。
それにより発生する矛盾と、俺は共生しなければならないのだ。
「透明」と「存在」という状態が、重なっているという、たちの悪い矛盾だ。
その矛盾の中で生きていくのは、ひどく困難な作業だ。

雑談

人が、何気なく人と雑談している様を、目の当たりにするだけで、俺は絶望する。
なぜならそれは、俺には成し得ない作業だからだ。

好奇心

人は、好奇心が奪われると、その時点で人間ではなくなる。

盗み見

人の生活を盗み見て喜んでいるような馬鹿は、いなくなればいい。

設計図

俺の、「家庭」という設計図は、ひどくずさんなものだ。
その、ずさんな設計図により構築された家庭は、決して人間を育てない。
この論理の証は、俺だ。

箱

俺は、小さな箱の中に収められている。
その意識は、俺がどんなに遠方へ足をのばしても、消えることはない。
目に映る景色も、変わり映えがしない。
とても小さな箱だ。

フレーズ

俺は、何をやっても無駄な結果しかもたらさない。
それに対して、「やってみなければわからない」などと言う馬鹿を、俺は相手にしない。
それは、当たり前の人間が発想する、安直でありきたりなフレーズであり、俺には通用しない。
そのようなフレーズを投げかけられて、誰しもが尻尾を振って大喜びするなど、大間違いだ。

ホコリ

他者は、俺に反応しない。
反応するとしても、せいぜい俺がたてるホコリを、煙たがるぐらいだ。
俺は、その程度の存在だ。

説教

俺へのアドバイスは、それが善意からのものであろうと悪意からのものであろうと、的外れな説教にしかならない。
俺は、それに辟易している。

バトン

俺は、誰からもバトンを受け取ることもなく、そして誰にもバトンを渡すことがない。
俺は、そういう存在だ。