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猫の爪

俺は、爪が無い猫だ。

猫は通常、成長過程において、己の爪の鋭さや危険度を他の猫から身をもって体験し理解する。
ゆえに、不用意に爪を出し他者を傷つける事をしない。

だが俺という猫は、その成長過程が欠損している。
したがって、その刃物のような爪をどう使用していいのか戸惑い思い悩む。

俺の場合、その問題を誰にも打ち明けられず、また爪を使う機会も無かった。
そうこうしているうちに、その爪は退化していくのだ。
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相撲取り

もし俺が相撲取りだとしたら、俺は土俵に上がっていない。

そして、稽古の場にも姿を現さない。

それでも俺は、相撲取りとして存在していなければならない。

それは、決して俺の意向ではないが、それでしか俺は存在のしようがないのだ。

明らかに矛盾した存在だ。
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フィクション

今日はドライブに逃げたが、やはり誰とも会わず誰ともしゃべらなかった。

今の俺にとってはそれが、日常だ。

俺がもし誰かと接するならば、それは非日常であり、ある意味フィクションになる。

それほどまでに俺は、人と接していない。
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